更新日 2024/06/07
専業主婦の年金が廃止されるかもしれないと聞いて、「老後の生活が苦しくなってしまうのではないか」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
専業主婦の年金は廃止されると決まったわけではないものの、今後制度が変わったり、廃止されたりする可能性があるため、今から老後に備えておくことが大切です。
ここでは、専業主婦の年金制度の見直しに向けた政府の動きや、老後を安心して迎えるための対策方法を解説します。
老後の年金に不安を感じている専業主婦の方は、ぜひ参考にしてください。
専業主婦の年金は、廃止されると決まったわけではありません。
しかし、厚生労働省は制度の見直しに関する議論を繰り返しており、将来的に廃止される可能性もあります。
日本では少子高齢化が進んでおり、1947年から1949年の第1ベビーブーム期に生まれた約800万人の団塊世代のすべてが2025年に75歳以上となることで超高齢化社会を迎えることになります。
75歳以上の人口が全人口の約18%となり、高齢者に支払われる社会保障費がさらに増加することが懸念されています。
このような社会的背景を受けて、現役世代の負担を軽減するためにも社会保険の適用を拡大する必要があると考えられています。
5年に1度の年金制度の改正が行われる2025年に専業主婦の年金の改正や廃止が実施される可能性があるので、今後の動きに注目しておきましょう。
専業主婦の年金とは、会社員や公務員といった第2号被保険者に扶養されている「第3号被保険者」の年金のことです。
国民年金は20歳以上60歳未満の方に加入義務があり、被保険者は以下のように3種類に分けられています。 第3号被保険者には、年収130万円未満かつ第2号被保険者の年収の2分の1以下の方が該当するため、専業主婦だけでなく、収入が一定以下のアルバイトやパート勤務の方も含まれます。
第3号被保険者に該当すれば、保険料を自分で納める必要はありません。
専業主婦の年金は、夫が仕事をして妻が専業主婦として家庭を守るといった考え方が一般的であった1985年につくられました。
専業主婦の年金の導入前は、夫名義で夫婦2人分の年金が支給されており、専業主婦の国民年金への加入は任意とされていました。
しかし、離婚した場合に年金がもらえないといった問題が発生するなど、不整合を調整する形でバランスを取り、政府は専業主婦を第3号被保険者の適用対象とし、年金を受け取れる仕組みを作りました。
専業主婦の年金制度は、単身世帯や共働き世帯との公平性が欠けていたり、働き控えの要因となっていたりすることから、廃止が検討されています。
どのような理由で専業主婦の年金が廃止されるのかを詳しく見ていきましょう。
専業主婦の年金の廃止が検討されている背景には、「年収の壁」を意識して労働時間を調整している方が多く、人手不足という問題を引き起こしていることが挙げられます。
年収の壁とは、税金や社会保険のボーダーラインのことです。
年収の壁を越えると税金や社会保険料の負担が大きくなり、手取り額が減少する可能性があります。
現行の社会保険制度では、会社員の配偶者などで一定の収入がない人は被扶養者(第3号被保険者)として社会保険料を負担していません。
そのため、年収の壁を超えないように働き控えをする方が多く、人手不足が問題視されているのです。
年収の壁には、以下のような種類があります。 夫や妻の扶養に入っている場合、アルバイトやパートで働く配偶者の年収が103万円以下であれば、配偶者控除の対象となり、夫/妻(主に高収入者)の所得税や住民税が軽減されます。
しかし、配偶者の年収が103万円を超えると、配偶者控除は適用されなくなり、代わりに配偶者特別控除が適用される可能性があります。
この特別控除は、配偶者の年収が201.6万円未満の場合に適用され、所得税や住民税の軽減が受けられます。 社会保険加入のボーダーラインには、106万円と130万円の壁があります。
まず、配偶者の年収が約106万円以上あると勤務先の社会保険への加入義務が発生します。
そして、配偶者の年収が130万円を超えると扶養から外れ、自分で社会保険料を納めることになります。
そのため、扶養から外れないように労働時間を調整し、働き控えをする方が増加しました。
この働き控えを問題視した政府は、2023年10月から一時的な収入の増加によって年収130万円を超えてしまった連続2年間は、扶養から外れないルールを設けました。
これにより、雇用主が一時的な収入増加であることを証明すれば、扶養に入り続けられることとなりました。
ただし、証明がない場合は扶養から外れてしまうので注意が必要です。
なお、106万円の壁に該当する勤務先の「社会保険へ加入義務が発生」するのは、以下の要件をすべて満たしている場合です。
✓ 従業員数101人以上の会社に勤務している
✓ 月給8万8,000円以上(年収106万円以上)
✓ 所定労働時間が週20時間以上
✓ 雇用期間の見込みが2ヵ月を超える
✓ 学生ではない
社会保険加入の要件のひとつである勤務先の従業員数は、2024年10月に「101人以上」から「51人以上」へ変更されます。
今後も加入対象範囲の拡大が予測され、社会保険に入らなければならない方がさらに増えることが考えられるので、どのように制度が改正されるのかを確認しておきましょう。
「専業主婦の年金を見直すべき」という議論は2000年頃から繰り返されていますが、制度改正は決まっていません。
これまでに出された改正案には、以下のようなものがあります。
✓ 第3号被保険者も保険料を負担する
✓ 第3号被保険者がもらえる年金の減額する
✓ 厚生年金の適用拡大による第3号被保険者の縮小する
いずれの案も、保険料の負担は増えるものの将来もらえる年金は増えなかったり、将来の年金が減ってしまったりする問題が指摘されています。
育児や介護のために、やむを得ず専業主婦となっている方もいるため、多方面への配慮が求められます。
2025年には5年に1度の年金制度改革の改正が行われるため、専業主婦の年金の制度改正や廃止が決まるのか注目しておきましょう。
専業主婦の年金が廃止されると、社会保険料の負担が増えたり、将来の年金受給額が減ったりすることで、生活が苦しくなってしまう可能性があります。
そのような状況にならないためにも、専業主婦の年金の廃止によって保険料の負担額がどれくらい増えるのかをシミュレーションしてみましょう。
専業主婦の年金が廃止された場合、パートで働く方は勤務先の社会保険に加入することになり、厚生年金保険料や健康保険料、雇用保険料の負担が発生します。
これらの社会保険料は、標準報酬月額を基準に算出します。
標準報酬月額とは、その年の4~6月の3ヵ月間の給料の月平均額のことです。
この標準報酬月額には、基本給以外に通勤手当や家族手当、住宅手当なども含まれ、賞与やお祝い金などの臨時的に支給されるものは含みません。
算出した標準報酬月額を社会保険の等級区分に当てはめることで保険料が決まります。
例えば、標準報酬月額が7万5,000円(年収90万円)の場合、厚生年金保険は1等級、健康保険は3等級です。
なお、雇用保険料は、給与総額に雇用保険料率0.6%(農林水産・清酒製造の事業または建設の事業の場合は0.7%)をかけて算出します。
専業主婦の年金が廃止された場合、パートで働く年収90万円の45歳の方の負担額は、以下のようになります。 参考:日本年金機構|令和6年度厚生年金保険料額表 参考:全国健康保険協会|令和6年3月分からの健康保険料額表 参考:厚生労働省|
令和6年度雇用保険料率 このように、専業主婦の年金が廃止された場合の負担額の合計は、年間で約15万6,000円です。
一方、収入がない45歳の専業主婦の方は、以下のように国民年金保険料と国民健康保険料の負担が発生します。 参考:日本年金機構|国民年金保険料
このように専業主婦の年金が廃止されると、1年間に約30万円の負担が発生します。
国民年金保険料は、毎月一定ですが、物価や賃金の伸びを考慮して毎年見直されています。
なお、国民健康保険料は、住んでいる地域によって異なるので、実際の納付額は自治体のホームページで確認しておきましょう。
年金制度が大きく変わろうとしている今、老後の生活が苦しくならないように、早いうちから自分で老後資金を用意することが大切です。
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