更新日 2024/01/02
岸田首相は2023年から「異次元の少子化対策」を政策に掲げていますが、2024年度税制改正でもその傾向が色濃く見られました。とくに大きな改正点は、住宅ローン減税の借入限度額の据え置きです。据え置かれるのは「子育て世帯」および「若者夫婦世帯」に限られます。
住宅ローン減税の新築住宅・買取再販住宅における借入限度額は、2024年から次のように引き下げられる予定でした。
〇長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円→4,500万円
〇ZEH水準省エネ住宅:4,500万円→3,500万円
〇省エネ基準適合住宅:4,000万円→3,000万円
しかし、2024年度税制改正では「子育て世帯」および「若者夫婦世帯」に限り、2023年の限度額が据え置きに。2025年についても、2025年度税制改正で2024年と同様の方向性で検討するとのことです。
子育て世帯とは、19歳未満の子を有する世帯を指します。一方、若年夫婦世帯は、夫婦のいずれかが40歳未満の世帯です。若年夫婦世帯は、子の有無が問われません。
住宅ローン減税は、年末の借入残高の0.7%が13年間(新築住宅・買取再販住宅)にわたって所得税と一部住民税から控除される制度です。しかし、借入限度額を超えて控除されることはありません。
2024年の借入限度額が2023年の据え置きになることで、控除額にどれほどの差が生じるのでしょうか?
ここでは、6,000万円の新築省エネ基準適合住宅を購入した場合を想定し比較します。
6,000万円の省エネ基準適合住宅を購入しても、年末の借入残高のうち3,500万円を超える部分は控除されないため、1年間の最大控除額は「3,500万円✕0.7%=24.5万円」です。13年間、年末の借入残高が3,500万円を下回らなかった場合の最大総控除額は「24.5万円✕13年=318.5万円」となります。
年末の借入残高のうち4,000万円まで控除されるとなると、1年間の最大控除額は「4,500万円✕0.7%=28万円」です。13年間、年末の借入残高が4,000万円を下回らなかった場合の最大総控除額は「31.5万円✕13年=364万円」となります。
また、控除・減税されるのは、住宅の購入だけではありません。次のようなリフォームを実施した場合には所得税が控除される特例があり、2024年度税制改正により適用期限が2年間延長されました。
〇耐震
〇バリアフリー
〇省エネ
〇三世代同居
〇長期優良住宅化
さらに2024年度税制改正では、リフォームの対象が子育て世帯・若者夫婦世帯が実質する「子育てに対応した住宅へのリフォーム」まで拡大。子育てに対応した住宅へのリフォームとは、次のような改修です。
中古住宅リフォームの控除制度いのける対象工事限度額および最大控除額は、上記のとおりです。
2024年度税制改正で新設された子育て対応リフォームの対象工事限度額は、250万円。最大控除額は25万円です。
2024年度税制改正では、次のように不動産の売買や所有を後押しする改正も見られました。
近年は全国的に地価が上昇傾向にありますが、現在は固定資産税の課税標準額の「負担調整措置」が取られています。同措置は2024年3月31日までの時限立法ですが、2024年度税制改正によって3年間延長します。
2024年は、固定資産税の評価替えの年にあたります。評価替えとは、3年に一度、資産価格の変動に対応し、固定資産税評価額を適正な価格に見直す作業です。同措置が延長になることで、急激に固定資産税が上がることが避けられます。
不動産や土地を購入する際には、不動産取得税や登録免許税、印紙税などさまざまな税金が課されます。また、所有中には固定資産税が課されます。これらの税金は時限立法により減税する特例措置が設けられていますが、2024年度税制改正により期限切れを目前とする次の特例の延長が決まりました。
〇不動産売買契約書・工事請負契約書に貼付する印紙税の軽減措置
〇住宅の所有権保存・移転、所有権設定登記にかかる登録免許税の軽減措置
〇新築住宅の固定資産税を一定期間減額
2024年度税制改正は「子育て支援」の傾向が色濃く見られました。住宅ローン減税の借入限度額が縮小する予定でしたが、子育て世帯および若者夫婦世帯に限り2023年の限度額が据え置かれ、この措置は2025年いっぱい続く見込みです。
子育て世帯のみならず、固定資産税や不動産取得税など不動産の売買・所有に課される税金の減税措置の延長も決まっています。2024年も、マイホームを取得する方々の税制優遇は引き続き手厚いものとなりそうです。
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